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なぜフィンランドのベンチは湖を向いているのか?【夢中観測ツアーinフィンランド】

フィンランドの湖にはいくつもの夢中があった!

フィンランドは、「1000の湖のある国」と呼ばれるほど、森林や湖に覆われた国です。実は正確にいうと1000どころではなく約19万近くの湖があるそうです。

2019年の6月にフィンランドにくらしの夢中を探しに訪れた際、湖水地方にあるアルヴァ・アアルトゆかりの町ユバスキュラでコテージに泊まりました。
どこまでも広がる森と、大小いくつもの湖が点在する様に圧倒されました。

日本の湖の数が約1万3千個らしいですから、ほぼ同じような国土の広さで、数は約15倍もあるということです!そして、湖のその水もガイドさんが「飲んでも大丈夫」と言うほど、とても透明度が高く、素晴らしく美しい水でした。

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国土に流れの速い川が多い国、日本。
日本人は昔から、川の流れに移りゆく人生の儚さを重ねたりします。
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず…という古文の授業で習ったあれですね。

そしてここフィンランドの人々は、湖に人生を重ねるんだとか。
波のない静かな湖の湖面のように平穏な心をよしとするんだそうです。

フィンランドの人にとって湖は、とても大事な存在、精神性のシンボルでもあるんです。今回はそんなフィンランドの湖と、それにまつわるベンチについて、実際に訪れて感じたことを書いてみたいと思います。

首都ヘルシンキからVRという高速鉄道で、ユバスキュラまではおよそ5時間。ヘルシンキよりもさらに北に位置しているため、ほとんど日が沈まない白夜も人生で初めて体感しました。

太陽が沈まないこの短い夏をフィンランドの人たちは思いっきり楽しむんですよね。まさに夢中の季節。

私はフィンランドの家族の夏の定番であるサマーコテージに滞在しました。
個人的見解ですが、深夜23時でもお昼の3時くらいじゃないか?という感覚になる明るさです。

湖で泳いだり釣りや森の散歩を全力で楽しんでもまだ明るい。
それでも日が沈みかける真夜中にはマジックアワーとなり、空と湖がなんとも言えないピンクと紫に染まります。

その光景を見た時「なんかラメランス(ボディソープ)のCMを見てるみたいだな…」

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※注 この写真は、ともにフィンランドを訪れた岩田リョウコさんから拝借しました!

といういかにもクラシエ社員的感想が一瞬浮かびましたが、それをさらに超えて大いなる自然の中に一人佇む自分を、どこかでボーっと見ているもう一人の自分がいるかのような不思議な気持ちになりました…

「ここもしかして天国ですか?」

もしも私が子どもだったらつい言ってしまいそうな、いや47歳になってもリアルに言ってしまった気がするほど、今まで見たこともない大自然の美しさに触れられたことは、人生でめったにできない貴重な体験となりました。

こんなに美しい自然が当たり前のようにくらしの中にあるから、フィンランド人はデザインやテキスタイルの表現力が優れているわけだと、あらためて心から感じることができました。

そんな感動も束の間。
フィンランドの自然に夢中になっている我々を恐怖の出来事が待っていました…

ブーンともの凄い音が耳の周りで聞こえたかと思ったその刹那、日本の夏の風物詩という表現を遥かに超える規模の蚊の大群が、私たちを襲ってきたのです。

「は、早く逃げろー!」「コ、コテージに入れー!」
まるでティラノサウルスに襲われた映画の主人公のような面持ちでダッシュでコテージに逃げ帰りました。
これもまた豊かな自然ならではの体験でした。

話を戻したいと思います。
蚊の大群から何とか事なきを得た私たちが、次にしたこと。
そう、それはフィンランド名物、湖畔のサウナです。

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日本のサウナと違ってTVなんてない静かな暗闇の薪サウナでたっぷりと汗を流した後に、桟橋から冷たく澄んだ湖に飛び込む。これこそがサウナに夢中なサウナーと言われる方々の一番の夢中の瞬間だそうです。

日本でも一大ブームを巻き起こし、老若男女問わず増え続けているサウナーたちの憧れを本場フィンランドでできるということは、それはもう言葉にできないような垂涎ものの体験らしいのです。

サウナの本場で、人生最高のサウナ体験。

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なぜ他人事みたいな語り口かというと、私は5月に不整脈のカテーテル手術を受けたばかり。水温15℃の湖にいきなり飛び込んで、まわりの方に迷惑を掛けるなんて、とてもできません。

そもそも、小さい時にはラドン温泉で入れたはずの水風呂も、大人になってからは一度も入ったことがなく、「あれは、自分とは違う世界の人たちがやることなんだ」と一人で勝手に決めつけていたのです。(念のためかかりつけのお医者さんからはサウナのOKをもらってはいましたが…)

ところが一緒に視察に行ったメンバーたちが、次から次へと桟橋から湖に飛び込んで幸せそうな顔をしているのを見ているうちに、なんだか、ゆっくりだったら、自分にもできるかな?いや、できるかも!できるはず!と勇気がふつふつと湧いてきたのです。

桟橋から湖に降りる梯子からおそるおそる、まるでスローモーションのような足取りで、少しずつ体を湖面につけていき、最後にはどぶんと頭が隠れるまで潜ることができました!

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体をしっかり冷やして急いで梯子を登ると、体の表面は引き締まり、内部の熱は逃げず、いつまでもポカポカで気持ちいい!え?なにこれ?もしかして?これってととのうってこと!?

サウナーたちを夢中にしてやまないサウナ、冷水からの外気浴というやつを、私も初めて経験できました。

その時、桟橋にあったベンチで、腰かけて仲間と語りあった至福の時間。

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すごく重要な話をしたという訳でもないのだけれど、心も体も裸になって、自然と一緒になれたような幸せな感覚。この湖畔のベンチ、まさにサウナ後に仲間と語り合うために置かれているベンチなのです。

そうそう、ここにベンチがないと。絶妙だよ、フィンランド。ここでのひと時が、私のフィンランド最高の思い出となりました。

湖を楽しむ。ただそのためだけのベンチ。

フィンランドのベンチに関して、もう一つ大切な思い出があります。
それはヘルシンキの郊外に住むリッタさんのお家を訪問した時のこと。

湖畔に素敵な家があり、そこでくつろいだ後に近くの森をみんなで散策しに行きました。その時も森の中のベンチはチラチラと私の目には入っていたはず。でもただ「日本よりベンチの数が多いな」くらいで、あまり深く気にも止めていなかったのですが、しばらくして、ランチタイム。

私たちの前にいた、とあるフィンランド人の4人家族が、ベンチに座っている姿を見て、なるほど!そうだったのか!!!と、日本との大きな違いに気がつきました!そう、ベンチの向きがどのベンチも湖の方を向いていたのです!

ベンチ後ろ姿_更新

日本でもベンチはよく見かけますが、こんな場所にあることはあまりないですよね。

しかもかなりの高さのある岩場の先端に、ロープも柵も立入禁止の看板もなんにもなく、ただ湖を眺めるためだけのベンチがある。
これってすごく贅沢なことだなあと感じました。

その家族には小さな女の子が2人いたのですが、およそ小一時間、みんなでお弁当を食べながら、一度も走り回ったりせず、家族での会話を楽しみながら、湖を眺めていたのです。そして夏に湖を眺めることがフィンランドの人たちにとって特別な時間なんだ、ということがよくわかりました。

フィンランドは3分の1が北極圏であり、冬になるとその多くがマイナス20℃を越える厳寒のくらしとなります。夏はあまりにも短く、貴重なものだからこそ、ベンチから片時も離れず、夏のよろこびやありがたさをかみしめながら、この家族は湖を楽しんでいたのかもしれません。

湖って当たり前ですが、波もないし、流れもないし、危険な魚もほとんどいない。全然怖さを感じることなく、泳ぎやすくて、気持ちよくて、まわりの自然も美しくて、本当に楽しい場所なんですよね。

今回は私もフィンランドの湖に、思いっきり夢中になることができました。

【湖のベンチで観測した夢中になるためのヒント】

・フィンランド人にとって湖はたくさんの夢中をくれる場所
・限りある短い夏だからみんな夏のくらしを夢中で楽しむ
・本場のサウナは自然との一体感がすごかった



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夢中フッタ


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