サウナ嫌いだった私がフィンランドで出会ってしまった夢中になれるサウナとは【夢中観測ツアーinフィンランド】
Kracieさんとフィンランドを訪れたサウナー“カズネン”と申します。
私が本格的にサウナに出会った場所フィンランドで実際に見て、聞いて感じたことを元に「サウナのあるくらし」について紹介したいと思います。
少しでも多くの皆さんが、この記事を通してサウナの魅力に気づいて、実際にくらしの中にサウナを取り入れてくださったら、こんなに嬉しいことはありません。
「熱いの苦手、我慢大会、おじさん向け」
サウナに興味などなかった私を、ここまで夢中にさせた魅力とは。
サウナと聞いてみなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?熱い、我慢大会、おじさんの憩いの場、水風呂なんて冷たすぎてもっての外!…こんな感じの方、多いのではないでしょうか。
昨年、マンガ家のタナカカツキ先生の著書「サ道」がドラマ化され話題になったり、テレビや雑誌などでも盛んに取り上げられたりして人気を博しているサウナ。しかしまだまだ多くの人にとっては自分向けのものではない、という印象ではないでしょうか。
私もたった1年前まではそうでした。それが今では週に4,5回は行くほどサウナに夢中になっています。今はコロナの影響もあり全然サウナに行けておりませんが…(泣)
SAUNAってそもそもフィンランド語だってこと、ご存知でしたか?日本で一番有名なフィンランド語ですよね、間違いなく。
その本場でサウナに入り、地元の方々のお話を聞いて理解を深める中で、サウナは私のくらしの中でなくてはならない特別な存在へと変わっていきました。
フィンランド人にとって家の中で一番大事な場所
人口およそ550万人のフィンランドには約300万箇所のサウナがあると言われています。一軒家の自宅にサウナがあるのはもちろん、マンションやホテル、オフィスやバーガーショップチェーンなどにもサウナが併設されているところもあります。
フィンランドには、「まずはサウナを建てる。家はその後」という言葉もあるほど、フィンランド人の生活そのものであるサウナ。
訪問初日に出会ったフィンランド人の方に、何の気なしに私が「〇〇さんはサウナ好きですか?」と質問した時に、彼が答えてくれたことがとても印象的でした。
「あなたは歯を磨くことが好きですか??フィンランド人にとってサウナは
好きとか嫌いとかではなく、生活そのもので当たり前にそこにあるものなのです」
好きとか嫌いの概念ではなく、サウナに入ることはフィンランド人にとって、くらしそのもの。「なるほどー。」と妙に納得したことを覚えています。
ヘルシンキ最古の老舗公衆サウナ「コティハルユ」が私の産湯になった日
ヘルシンキに到着した日の午後にさっそく駆けつけたのが、1928年創業のヘルシンキ最古の老舗公衆サウナ「コティハルユ」。
日本で事前にWEBでチェックしており、サウナの入口の道端で地元の常連さんが男女問わずタオル1枚で外気浴を楽しむ姿を見て興味津々でした。
サウナ室は男女別になっており、受付で支払いを済ませたら右側の男性ロッカーへ。ロッカーは昔ながらの木製ロッカーで鍵の掛け方がよくわからずあたふたしていると、常連らしいフィンランド人のおじさんが優しく教えてくれました。
サウナ室にタオルを持ち込んでいいのかわからずキョロキョロしていたら、ロッカーの使い方を教えてくれたおじさんが堂々と真っ裸でサウナ室に行く姿を見て、意を決して、タオルをフックにかけて、いざサウナ室へ。
中には巨大な薪サウナストーブがあり、セルフロウリュ(※)も、やり放題!
常連らしいおじさんたちは「どこから来たんだ?」「フィンランドサウナ初体験なら、まずロウリュをやってみな。そしてここ(最上段の奥)がベストスポットだからおいで」と見るからに外国人観光客の我々をオープンに仲間扱いしてくれます。これはとてもうれしい。
サウナ室内は木の香りが漂い、しっかり湿度があり温度も思ったより高くないのですが(こんな感覚、日本のサウナで感じたことない!)、ロウリュをして常連さんのオススメ席に座ると、熱波がダイレクトに届いて体感温度が急激に上がり、一気に汗が噴き出すのです。
サウナ室でしっかり温まって、水シャワー(都市部のサウナは近くに湖がない限りは水シャワーで汗を流します)で汗を流したら、いよいよタオルを巻いて、道端の外気浴。これがやってみたかった!受付でビールを購入して、常連さんに混じっておしゃべり開始。
国境なんて裸で越えて、サウナ好きならみんな友達。「どこから来たの?」「ここのサウナがいいから行ったらいいよ。」とサウナ談義に花が咲きます。ここであるおじさんに教えてもらった、フィンランドのことわざが、めちゃめちゃ素敵なんです。
「すべての人は生まれながらに平等だ。しかし、サウナよりそれを体現できる場所はない」
コティハルユの外気浴中に話を聞いたおじさんがいうには、いつもサウナで話をする常連客の仲間が、後々聞くと有名な会社の社長や国会議員だったことも、よくあるそう。
洋服や時計などの装飾品を身にまとうことができないサウナでは、みんな1人の人間として平等に付き合える。職業や収入や国籍なんか関係なく、生まれたままの姿で心を開いてひとりの人間として語り合う。
大人になってから、こんなに得難く素晴らしい経験が出来るなんて…と腰タオル一枚でフィンランドの爽やかな初夏のそよ風に吹かれ、おいしい缶ビールを飲みながら、いたく感動したのです。
それでも、ふと冷静になると、ここは普通の住宅街の道の真ん中。高校生が自転車で通り過ぎたり、カップルが歩いて通りかかったりする中に、ほぼ裸の人々がたくさんいる不思議な光景。でもみんな全然気にしてない。
フィンランドとサウナが切っても切れない関係なのがよくわかるなあと思い、その一員になれた私は心も身体も非常にいい気分になりました。ん?これってもしかしていわゆるあの「ととのった」ってやつなのか…!?
サウナってこんなに気持ちいいものだったとは。サウナ→水シャワー→道端での外気浴で初めて完全に「ととのい」を覚えた私。
ちなみにサウナーの世界では初めて「ととのう」という感覚を感じたサウナを“産湯”というそうで、私の産湯はヘルシンキの「コティハルユ」ということになりました。
まだサウナ新人なのに、いきなり本場フィンランドのサウナで初めてととのってしまうなんて、なんだか贅沢すぎて申し訳ない限りです。
日本ではタオルやうちわで仰ぐパフォーマンスのことを「ロウリュ」と認識されている方もいるかもしれませんが、あれはドイツ発祥の「アウフグース」と呼ばれる温浴法です。フィンランドではサウナストーンにアロマ水をかけて、蒸気を発生させることを「ロウリュ」と呼びます。
サウナの概念を完全に変えられた!都市型最新サウナ施設 LÖYLY(ロウリュ)
続いて訪れたサウナはバルト海沿いに2016年にオープンした、サウナとレストランの複合施設にしてヘルシンキのオシャレスポットの一つにもなっている「 LÖYLY(ロウリュ)」。
超かっこいい建築の中には薪サウナとスモークサウナがどちらもあり、男女共用施設のため、ロッカーで水着に着替えます。このサウナ最大の魅力は、サウナで温まったら、水風呂がわりに冷たいバルト海に直接ドボンできるところ。
日本ではなかなか味わえない、自然との一体感が体験できるのです!
実は今、世界中で注目されていて、この日も地元の若者だけでなく、多くの海外旅行客を夢中にしていたLÖYLY(ロウリュ)。この施設で改めて感じたことは、フィンランド人が老若男女問わずみんなが心からサウナを楽しんでいるということ。
若い女性グループが仲良くお喋りに夢中になっていたり、老夫婦や家族、3歳くらいの女の子もしっかりサウナで温まり、思い思いにサウナストーンに水をかけながら静かにリラックスした時間を楽しんでいたのです。
日本のサウナには年齢制限があり子どもが入れないことも多いですが、フィンランドでは早い子は数ヶ月くらいの頃から自宅のサウナに入るらしいですね。ちなみに、 LÖYLY(ロウリュ)での出来事ではないですが、とあるサウナに伺った時には犬が気持ち良さそうに入っており驚きました。
フィンランドにおいては、熱や煙などによって殺菌されているサウナ室はもっとも清潔な場所とされ、かつては、サウナの中で出産し、治癒し、手術をし、亡くなられたご遺体を埋葬前に洗うなど、生まれてから死ぬまで(死んでもなお)人々はサウナとともにあったそうです。
6月のヘルシンキは気温も高く、海水は適度に冷たく気持ちいい時期で、バルト海に飛び込んだ瞬間は大げさでなく地球に抱きしめられている…そんな感覚に陥りました。
ちなみに真冬はバルト海に通じる階段や手すりが凍るほどですが、フィンランドの方々は海にドボンして温と冷の交代浴を楽しむようです!私もいつか真冬のバルト海ドボンに挑戦してみたい!
実は、ここで私が大失態をやらかしまして。
撮影のために購入したばかりの一眼レフカメラを大事に思うあまり、大切にロッカーにしまったまではいいのですが、お財布やパスポートやiPhoneなどがすべて入ったリュックサックをロッカーの前に置き去りにしてしまっていたのです。
2時間あまりサウナを楽しんでロッカーに戻った時にリュックサックを見て「あれ?自分のと似てるリュックだなあ…ちゃんとロッカーに入れとけよ、不用心すぎるだろ…」と思っていたら、なんとそれはまさに私のもの。サウナを楽しんでいた丸々2時間そこに無防備に置き去りのままだったのでした。
焦って中を見たところ、なんとお財布やパスポートなどもすべて無事。結果的には事なきを得て良かったのですが、めちゃくちゃ肝を冷やしました。身を呈してフィンランドの安全性を証明した私ですが、みなさまは真似しないようにして下さいね(笑)。
天国に一番近いサウナは、きっとここです
フィンランド旅の後半は、ヘルシンキ中央駅から電車でおよそ4時間かけて
フィンランド人でも知る人ぞ知る村、ハンカサルミまで。目的はただ一つ、この村の自然のど真ん中にあるレヴォントゥリリゾート。
こちらのリゾートには、電気サウナ、薪サウナ、そしてスモークサウナと3種類のサウナが揃っています。その中でも一番の目玉は、オーナーさん自らが何時間もかけて丁寧に準備してくれたスモークサウナ。
スモークサウナはキングオブサウナと言われていますが日本ではなかなか体験できない貴重なもの。結果から言うと、このスモークサウナ経験が私を一気にサウナーへの道に進ませたのです。
サウナ室は足元にかすかに光が入る程度で、ほとんど真っ暗。目が慣れるまでは一切何も見えない状態です。視覚がほぼ遮られることでゆっくりと自分自身と向き合える時間が持てます。
木とスモークの優しい香り。丁寧にサウナ室を温めてもらったからこその、じんわり体の芯から温まる低温かつ適度な湿度環境。ロウリュをすると一気に体感温度は上がり心地よくしっかり汗をかくことができます。サウナの後は、目の前の湖にドボン。
湖の水質は飲んでもまったく問題ないほどきれいだそう。スモークサウナでしっかり温まった身体が全身でフィンランドの自然を感じています。ずっとここにいたい。スモークサウナと湖に抱かれて生きていければどんなに幸せだろう。そう心の底から思ってしまったほどです。
幸福度3年連続世界一のフィンランド
スモークサウナの中や湖の中でずっと考えていたことがあります。
冬の気温がマイナス20度以下になったり、極夜で全く太陽が昇らない日があるフィンランドがどうして、何年も連続で世界の幸福度ランキングで世界一になっているのか。大自然とサウナしかない環境の中で、自然に身を任せ、
自分の心の声を聞くことによって、私なりに気づいたことがあります。
薄暗いサウナ室で自分と向き合い、汗とともに余分なものをすべて出して、本来の自分に戻る。その後、大自然の湖に抱かれて、ただただ心が洗われて
身体的にも精神的にも解放される。このような体験を生まれて間もない頃から繰り返し生活の一部として生きているフィンランド人。
日本ではもっと新しく、もっと便利でいいものをと考えがちで、そこにはキリがなく自分が手に入れたいモノや地位なども、本当に欲しいわけではなくまわりから、どう見られるかにこだわりすぎているのではないか。
夢中も同じで、みんなが夢中になっているから自分もやろうとか今これに夢中になったほうが得だからとかそういうことではなくて、本当に心の底から自分と向き合って自分と会話することで、自分だけの夢中が見えてくるんだと思いました。
自分と会話したいときに、暗くて温かくてテレビも時計もないフィンランドのサウナは最高の場所なんだと思います。
旅の中で出会ったフィンランド人や日本人でも長くフィンランドに住んでいる人は共通して、ずっと変わらない価値を大切に暮らしていました。
サウナや森歩きなどを通して心を平穏に保つ秘訣を幼い頃から体に染みつかせており、人間も自然の中に生かされている自然の一部なんだと考え、他人と比べるのではなくて、自分がどうしたいのか、どうなりたいのか、と常に向き合って、自分にはどうにもできない自然や、他の人のことなど、自分の外のことをポジティブに諦めて「委ねる、信じる力」が幸せにつながっているのでは?と感じました。
モノや人の評価は相対的なもので自分だけではコントロールできないもの。
対して、自然の中の価値観はいつも自分の心に向き合って決めることができる絶対的なものなんだろうな。そう感じてからは、日本に帰ってきてからもサウナを探すときの基準が変わりました。
以前は、清潔なところじゃないと嫌だとか、隣のおじさんの汗が気になるから混雑しているサウナは嫌だとか、テレビがあるのが嫌だとか減点方式で物事を考えていました。
でも、フィンランドでサウナを経験して、いろいろなフィンランド人からサウナ論を聞かせてもらってからは、「まーいっか」と細かいことは気にせず優しくなれたような気がします。
自分と向き合うことで、便利になりすぎて忘れていた「許すこと」や「優しくなること」「相手や自分を思いやること」の大切さをフィンランドのサウナが教えてくれたんだと思います。
少しでも早く世の中に平穏が訪れて、思いっきりサウナで自分の心と身体に向き合える時間が持てますように。
少しでもサウナに興味を持っていただけた方がいたら、今度ぜひ一緒にサウナ行きましょう。
【フィンランドのサウナで観測した夢中になるためのヒント】
・すべての人は平等だ。しかし、サウナよりそれを体現できる場所はない。
・無いものを嘆くのではなくてあるものを最大限活用しようとする姿勢に幸せがある
・他の人の目じゃなくて自分の心の声をいつも聞く場所
・人間も自然の中に生かされている自然の一部だと思える場所
・日本では自分と会話する時間が少ないから夢中を見つけにくい
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