【クラシエの夢中人インタビュー】アウトドアで得たものは、自分だけが見れる夢中の景色だった。
世の中にもっと夢中を増やすために生まれた「くらしの夢中観測所」。
今回は、クラシエ社員の夢中にスポットライトを当ててみます。
クラシエホームプロダクツ㈱ ビューティケア研究所の礒辺 真人さんです。2010年の入社以来、ヘアケアの研究一筋。日々夢中で業務に取り組んでいます。2021年には「髪の若返り」という前例のない研究テーマに臆せず挑む姿勢が評価され、NICE!CRAZY大賞を受賞しました。
そんな礒辺さんは私生活でも夢中を追いかけ続けています。
その夢中とはアウトドア。ツーリング、スノーボード、登山、キャンプと、そのジャンルもさまざまです。
たくさんの夢中でくらしを彩る礒辺さんに、自分自身も夢中人である赤たぬきが話を聞きました。
「アウトドアは家で引きこもっているのと似た感覚なんです」
― アウトドアに夢中になったきっかけを教えてください。
もともと人付き合いが苦手なんです。人がいない場所が好きで、旅行でもそういう場所を選んでいると、おのずと山や海に出かけるようになっていました。大学でバイクに乗り始めて、寝袋ひとつ担いで旅する生活をしていた時期があり、その頃から本格的にはまっていったのだと思います。
― バイクは何をきっかけにはじめたのですか?
大学生になったので、新しいことにチャレンジしてみたいという気持ちがありました。あとは、小さい頃から“遠くに行きたい”という思いが強くて。自転車に乗って一人でどこへでも出かけるような子どもだったので、バイクが魅力的に思えたのかもしれません。
― 小さい頃に一人で行動するのを、周りの人に止められた経験はないですか?
そういった記憶はあまりないですね。むしろサポートしてくれる親だったと思います。そのかわり今でもよく「あんたには心配させられてばかりだった」と言われます(笑)。
― 海にも行かれるとのことですが、どんなことをされるのですか?
釣りは小さい頃からやっていて、今もよく行きます。あとは、ウェイクボードやサーフィンなどもしますね。
― 人に会わないという意味では、家に引きこもるのでもいいのかなと思うのですが、どうしてアウトドアだったのでしょうか?
自分としては、外に一人でいるのも、家で引きこもっているのも似た感覚なんです。今でも漫画やアニメで一日中過ごす日はたくさんありますし、それも全く苦痛じゃない。外に出かけるのだって、明日天気がいいから行ってみようかな、くらいの気楽さなので、その二つに違いはあまり感じてないですね。
夢中は移り変わるのではなく、広がっていくもの
― 礒辺さんはバイクをきっかけに、ツーリング、スノーボード、登山、キャンプと、さまざまなジャンルのアウトドアに夢中になっていますよね。どのように移り変わっていったのでしょうか。
ツーリング、スノーボードというように、一般的にジャンル分けはされていますが 、自分では違うものという意識はあまりなくて、あくまでアウトドアという一つのものなんです。だから夢中が移り変わっていったという認識もない。広がっていくという感覚の方が近いかもしれません。
― 広がっていったのはなぜでしょうか?
環境の変化はあると思います。私は福岡出身なのですが、仙台の大学に入学し、そこでバイクに乗り始めたんです。夏はツーリングができたのですが、冬になると雪が降るからできなくて。でもアウトドアはしたかったので、冬に外に出るための手段として、スノーボードをやってみようと思いました。
― なるほど。環境が変わったからこそ出会えた夢中なのですね。
関わる人の変化もあります。アウトドアをしていると、興味を持った人たちから声をかけてもらうことが多くて、自然と周りに人が増えていくんです。その人たちと一緒に何かしようと考えているうちに、活動が広がっています。
― 最初は人のいない場所に行きたい、という想いだった。でも今は色んな人と一緒に活動することも増えているのですね。
そうですね。一人での活動も続けていますが、今はどちらもあります。仲間とするアウトドアは計画を立てる時点からまったくの別物で、一人の時には味わえない楽しみがあります。
― 自分が夢中になっている姿を示すことで、夢中が広がっていく。
例えば、今一番メインで活動しているのは登山なのですが、数年前、研究所の人から富士山に登りたいと声をかけてもらったんです。それをきっかけに定期的に登山をする集まりができて、気づけばメンバーも10人くらいに増えて、今はちょっとした部活動みたいになっています。
― 私も参加してみたいです。礒辺さんとは少し勤務地が離れていますが、いつか一緒に活動できたら楽しいですね。
登山の魅力は、成功も失敗もすべて自分のものだと思えること
― 今は登山がメインとのことですが、山のどんなところに魅力を感じていますか?
自分の苦労が報われる瞬間が、明確に分かるところです。普段の生活だと、何か成功したとき、それが本当に自分の力なのか、周りの力なのか、偶然か、分からないことも多いのですが、アウトドアはそれがはっきりする。自分の成長を実感しやすいんです。
例えば対人のゲームやスポーツだと、たまたま今回は強い相手に当たっただけ、と言い訳ができてしまうじゃないですか。仕事でも、失敗したときに自分は悪くないとつい思ってしまうこともある。でも自然相手だとそれがない。成功も失敗も、すべてダイレクトに自分に返ってくる。すべて自分のものだと思えます。
― ストイックですね。その感情を、わかりやすく一言で表すとしたら、どうなりますか?
一言ですか(笑)。「……ふう」という感じですかね。今回も一仕事達成したぞ。みたいな。
― やはり、山頂についたときに達成感がありますか?
どちらかと言えば下山したときですね。山頂は景色もきれいだし、ようやく着いたという達成感があるのですが、やはり何事もなく下山できたときに一番達成感があります。登山は事前にしっかりと行程の計画を立ててから行くので、その計画通りに行動して、想定していた時間に下山ができたらよかったなと思うし、逆にできなかったら計画が間違っていたのだなと反省します。
― 下山したときが一番なのですね。意外でした。
キャンプでも、登山ほどストイックではないですが、例えばこんな火おこしをしてみたいとか、こんな設営をしてみたいとか、やりたいことを用意して現地に行って、そこで自分の力でやってみる。するとうまくいくときもいかないときもある。そんな感じで、あとから振り返って考えることはよくしますね。
― 思い描いたことを、どれだけ実現できたか。その過程が魅力なのですね。
そうしていると、自然と次はどうしよう?と考えるようになる。ループするんです。だから、自分のなかでは一つ一つに区切りがあるとは考えてないですね。
― これまでで記憶に残っている山はどこですか?
裏剱の仙人池に、五日ほどかけて行ったときのことが記憶に残っています。とても天気がよくて、ちょうど紅葉の時期で、雪もあって。鮮やかな色のコントラストが思い出深いです。
チャレンジしてみて、ダメなら引き返せば良い
― 極端かもしれませんが、もしアウトドアが禁止されたとしたらどうしますか?
どうしましょうかね…。やはり別の趣味を見つけると思います。
― どんなふうに新しい趣味を探すのでしょう?
禁止されてないものを、片っ端からやってみるんじゃないですかね。まずは、今自分が持っている能力、道具でできるようなことから始めて、そこから徐々に趣味の幅を広げていくような気がします。
― 身近なものでいいから、まずは手を出してみる。……何だかこれまでのお話を聞いていると、礒辺さんは行動へ踏み出すはじめの一歩が軽い人だという印象を受けます。なぜ踏み出せるのでしょうか?
これまで色んなことをやってきたなかで、失敗も人並み以上にしていると思っています。怪我もたくさんしました。でも、そういった経験をしても、結局何とかなっている。だから、そこまで先のことを心配しなくても、チャレンジしてみて、ダメそうなら引き返せば良い。失敗に対する重みが人より軽いのかもしれません。こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれませんが、自分が死んでないならいいか、くらいの感覚ですね(笑)。
― ある程度の失敗は割り切って行動してみる、ということですね。
失敗もいい経験だと思います。もともと苦労や失敗が嫌いではないので、仕事でそういうことがあっても、人より楽しめているなと感じています。
新しいことに挑戦するなかで、小さな失敗に慣れていく
― 新しいことを、何もないところから一人で始めることは、すごく大変なことだと思います。きっと誰かに教えてもらうほうが楽です。でも礒辺さんは一人で始めることが多いのですね。
自分で試行錯誤することは多いですね。最初からハードルを上げすぎないというのは意識しているかもしれません。理想を高くしすぎず、やれるところからやっていく。
― 苦労や失敗が嫌いではないし、怖がってもいない。だから様々なことに一人で挑戦できるのだと感じます。そういう状態になるにはどうすればいいでしょう?
小さな失敗を重ねていくことだと思います。もちろん、やりたくてやる失敗なんてありませんが、新しいことをしていれば、多少の失敗は当然ある。それに慣れていけばいいのだと思います。私は、普段の些細な失敗を他の要因のせいにせず、自分事として考えるようにしています。そうすると失敗したときにパニックにならず、対処法を考えられるようになっていきます。
― これから新しく始めてみたいことはありますか?
海、山ときたので、次は空に関することをやってみたいですね。
― 私の夢中は、飛行機を見ることなんです。ぜひ一緒に空港にいきましょう。礒辺さんほどアクティブな趣味ではないですが。
ぜひ行きましょう。こういう機会を逃さないことが大切だと思います。新しいことに出会えたら、はまるかどうかはさておき、そのときにやってみる。私も今になって新しくバイクを始めるかと言われたら、無理かもしれない。タイミングってすごく重要ですね。
― 私も夢中の種をみつけたときは、一歩踏み出してみようと思います。
インタビュアー:赤たぬき
ライター:レーズンぱん
フォトグラファー:佐藤