見出し画像

インサイト「子どもの頃の感動をもう一度味わいたい」を新たな事業展開につなげるために

「くらしの夢中観測所」で2年間、さまざまな視点からくらしの夢中について考察してきました。
くらしの夢中とは「その人が見つけた自分らしい心地よさ」のことであると私は考えています。
日々のくらしの中でちょっとした幸せを感じられるようなもの、行為、存在、環境といったものが、その人のくらしの夢中だと考えています。
そのくらしの夢中に対して「なぜその人はそこに幸せを感じているんだろう?」と考えていき、その人のインサイト(本音)を見つけ出し、次のくらしの夢中のヒントを探るのがこの夢中観測所の活動です。
今期の活動からは、私自身の業務にもつながるような夢中ヒントを見つけ出すことができました。


一人の人にフォーカスしたインサイト深掘りの難しさとおもしろさ

私はクラシエフーズのマーケティング室で知育菓子®のプロモーションを担当しています。消費者が商品を購入する理由や消費シーン、購入以降に抱く気持ちをもっと解像度高く知りたいと考えていたので、2年前に「くらしの夢中観測所」に応募しました。

今期、最も印象に残ったのは東京の森下で実施された合宿への参加です。なかでも、ほぼ1日かけてインサイトの深掘りをした2日目は忘れられません。グループメンバーと議論を深めていたのですが、途中、話が抽象化したり堂々巡りしたりすることも……。何とかインサイトを導き出しましたが、結局「これだ!」というところまではたどり着けませんでした。

普段の業務で消費者調査は行っていますが、一人の人にフォーカスしていろいろな視点からインタビュー対象者の本音を探っていくという経験は初めてです。この作業は想像の十倍以上の難しさがありましたが、対象者の心の奥底を探る面白さも感じました。これは、テーマを決めて実施する定量調査からは見えてこないものだと思います。

新たな視点を取り入れることでインサイトに昇華されていく実感

インサイトの深掘りは、回を重ねるごとにブラッシュアップされていきました。私がインサイトを深掘りするうえで最も効果的だと感じたのは、「インサイト磨きこみ」のメソッドです。これは、「インサイト深掘りフロー」を使って、発表者(インサイトを考えた人)に他の人が質問をしながら皆でインサイトを磨き込んでいく方法です。他の人の質問には、自分では思いつかないような切り口が含まれており、質問への回答を考えるだけで自然と思考を深めることができ、一人では発見できなかったインサイトにまで昇華されていく実感がありました。

定例会のたびに実施していた「インサイト大喜利」でも目から鱗が落ちるような気付きがありました。インサイト大喜利は、誰か一人が発表した“好きなもの”に対して、他の人が問答を繰り返したり、インサイトの仮説を何度もぶつけたりすることで、発表者の本音を見つけ出す手法です。

私が発表者になった際は、「子どもの頃から好きだったポケモンのゲームを、大人になってから再開して、今現在も楽しんでいる」という話をしました。実は、内心どうして自分はこんなにポケモンが好きなんだろう? と、少し疑問に感じるところはあったのですが、皆からの質問に受け応えするうちに、自分が「子どもの頃の感動をもう一度味わいたい」という想いを抱いていたことに気付かされたのです。

子どもの頃は、「すごく感動した!」「すごく嬉しい!」という体験ができていたのに、大人になると感情が大きく揺さぶられるような体験は減ってしまいます。でも、子どもの時に感動した記憶は消えません。そこで、もう一度同じ体験をすることで、その時の気持ちを取り戻そうとしていたことが分かりました。
振り返ると、昨年クラシエフーズが発売した大人向けの知育菓子®「大人のねるねるねるね」のヒットがそのインサイトを物語っていました。ロングセラーの「ねるねるねるね」はその不思議さや楽しさにより、発売当時から子ども達の心を鷲づかみにしてきました。その子ども達が大人になり、「大人のねるねるねるね」をきっかけに久しぶりに「ねるねるねるね」に再会したことが心の琴線に触れ、「ノスタルジーに浸れる」「エモい」とTwitterでトレンド入りを果たすまでの大きなブームを巻き起こしたのです。私のなかに見つけたインサイトは「大人のねるねるねるね」の消費者にも共通したインサイトで、次なる商品開発のヒントになりそうだと考えています。

確立したインタビュースタイルや、発見したインサイトを事業に生かすために

今期に実施したインタビューで得たスキルは、業務にも反映できるのではないかと考えています。たとえば私の場合、「この人はこういうインサイトを持っているのではないか」という仮説を持ちながら質問をしていくというインタビュースタイルを観測所の活動で確立しました。仮説を持たずに話をするよりも効率的に質問ができるからです。

これまで、マーケティングの一環で行っていたグループインタビューはプロの司会者に協力していただいていたのですが、今後もし機会があれば自分自身でインタビューに挑戦してみたいと考えています。技術さえ身に付ければ、社員自身がインタビュアーとなり、より深い質問ができるのではないかと思うからです。

子ども視点を生かした商品開発をするために、子どもへのインタビューや、子どもの観察などにも取り組んでみたいと考えています。観測所で身に付けた知見や、発見したインサイトを今後どう事業に生かしていくかを模索することも、私の課題となりそうです。


くらしの夢中観測員:宮迫雅