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心と身体はひとつ。変わりゆく今のくらしに、漢方ができること。

健康志向を背景に、じわじわと人気が高まっている“漢方”。新型コロナウイルスが猛威を振るう今、ますます注目が集まっています。

そしてもしかすると、漢方について知り、自分の心身の整え方を知ることは、明日の夢中をつくる近道かもしれません。

今回は、漢方情報ポータルサイト「Kampoful Life(カンポフルライフ)」を立ち上げるなど漢方の普及活動に力を入れてきた、クラシエ製薬株式会社 執行役員 草柳徹哉が、漢方の根底にある考え方や、普及への想い、くらしに取り入れるためのヒントなどを紹介します。

実は、2000年前から「人は100年生きる」と言われていた?

漢方の歴史は古く、およそ2000年前からあると言われています。中国最古の医学書と言われる『黄帝内経(こうていだいけい)』など、漢方について書かれている有名な書物もいくつか残っています。

最近は「人生100年時代」と言われていますが、驚くことに2000年前の書物にも「人は100年生きる」と書いてあるんです。「食養生」と言って、体に良いものを食べて、バランスを整え、生活をすることが、寿命を延ばしていく、としっかり書いてあります。そうした人間の知恵が蓄積されてきたものが漢方なんです。

実は日本の漢方は、中国の中医学や韓国の韓方とは別物です。中医学を基礎とし、それぞれが独自の発展をしていると考えていただくといいと思います。

時代劇に薬草をミックスしてゴロゴロ挽いて飲むシーンが出てきますが、江戸時代から日本独自の処方や知見が蓄えられていきました。そこからさらに発展して、日本はエキスを抽出したものを薬の形にしていくようになります。中国などは湯剤(とうざい)と言って煮出したものをそのまま飲むスタイルが主流なので、飲み方も違いますよね。

エキスを抽出する技術があることで、顆粒や錠剤、液剤などにすることができます。処方の特性やお客様のニーズに合わせて選択できるようになり、衛生的に保存できるようにもなりました。

そういった日本独自の製造技術は韓国からも評価されていて、クラシエでは韓国でも日本式の漢方の医療用ビジネスを展開しているんです。

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根底にあるのは「心と身体はひとつ」という考え方。
漢方の根底にある考え方は、2000年前から変わらない。

良い食事を身体に摂り入れることが、薬を飲むのと同じくらい価値があるという「医食同源」の考え方や、「心と身体はひとつ」という「心身一如(しんしんいちじょ)」の考え方が漢方の根底にあることは2000年前から変わりません。

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しかし最近は、特に病院で処方される医療用の方で、どの生薬(*1)がどう身体に働きかけて、病気や疾患が治っていくのかというアカデミックな研究が進み、エビデンスを示せるようになってきました。2000年前はわからなかったことが、分析技術などの向上によりわかるようになってきているんです。

漢方薬は副作用が少ないからいいとか、穏やかに効いてくるという、なんとなく身体にいい印象がある方は多いと思いますが、これからはなぜ効くのか、さらにどう飲むといいのか、科学的な面からも有用性をアピールできるようになっていくと期待しています。

*1:自然界に存在する植物、動物や鉱物などの薬効となる部分のこと


同じ病気でも人によって違う薬が処方される「同病異治(どうびょういち)」という考え方。

漢方は突き詰めていくと、究極のカスタマイズです。
一人一人違う人間だから、心身の状態を診て、その人に合わせて飲む量や合わせる生薬の種類を変えて処方するのが基本なんです。中国ではそのスタイルで調合して出しています。

日本の場合は、医薬品として決められた処方があり、エキスの規格が決まっているのでハードルは高いですが、作用やメカニズムが科学的に解明されていけば今後は一人一人に合わせてカスタマイズしていく可能性もあるかもしれませんね。

漢方の考え方が浸透すると、日本人のくらしが変わる。

心身が一つであることを意識して両方のバランスを整えることを考えるようになると、より健康的にくらせるようになると思います。

「医食同源」というように、やはり人間の身体は食べたものでできていますので、何をどう食べるかは大事です。しかし、食事だけでなく運動も大事ですよね。食事と運動が健康の根源にあって、その中で自分に合うものを取り入れることが一番重要です。

病気になる一歩手前の状態を「未病」と言うこともありますが、なんとなく調子が悪いと感じることは、誰にでも起こり得ること。

特にストレスやメンタルが原因の場合は、病院で薬をもらっても改善しないことも多いです。そういう、なんとなく気分が優れない、調子が悪いというときに飲む漢方薬が、今すごく支持されています。

特に女性に多いのが、ストレス、むくみやすい、疲れやすい、めまいがするといった症状。原因がはっきりしない不安なとき、漢方薬のように寄り添ってくれるものがあると、前向きにくらせるようになるのではないでしょうか。

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コロナ禍により生活を制限され、我慢をしながらくらす、“withストレス時代”がしばらく続くと考えられます。普段元気な人も、どこかでストレスを感じることが出てくるかもしれません。

そういうときに、ストレスを解消する方法をいくつも持っていることが大事です。運動や食事に加え、ストレスに対処する手段として漢方薬も取り入れていただくといいのではないかと思います。

漢方の情報発信に力を入れているワケ。

OTC漢方事業(*2)のマーケティングを担当してすぐ、2015年頃にアンケート調査を実施したのですが、ドラッグストアで1回も漢方薬を購入したことがない人が34%もいました。一般用としては約1/3がまだ漢方薬を買ったことがないという事実です。

*2:OverTheCounterの略 薬局・薬店・ドラッグストアなどへの販売をメインとした事業のこと

まだ漢方をあまりよく知らず、手にとっていない人が多いということは、漢方の役立つ情報を的確に発信し、知ってもらうことが何よりも大事ではないかと考え、「Kampoful Life」というサイトを立ち上げました。

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「Kampoful Life」 https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/

どんな情報でもまずはウエブサイトを検索する行為が当たり前になっていますが、体調不良のときにもまずは症状などで検索する方も多いのではないでしょうか。身体や心の不調のとき、いろいろな情報がある中に、「クラシエの漢方」の情報も届けられればと考えました。

「Kampoful Life」は、病気や疾患への対処の話ばかりではなく、漢方の考えに近い薬膳や運動の話など漢方の周辺的な情報にも触れられるサイトにしています。

また一方で注目されているフレイル(*3)や専門性の高いドクターのお話を紹介するなど、幅広いテーマで健康に関する情報をお届けし、そこに漢方の知識を入れることで、より漢方を身近に感じてもらおうと考えています。

*3:加齢に伴って筋力や心身の活力が低下することにより、生活機能障害や要介護状態に陥りやすくなる状態のこと


漢方薬の情報をわかりやすく正しく伝えることが、普及の決め手。

漢方薬は処方がたくさんあり、説明が必要な商品なので、一般用で言えばドラッグストアで目にしても、なかなかセルフで購入に結びつかないという課題があります。

そのため、お客さまと接する機会が一番多い、ドラッグストアの販売員の方にもより漢方薬を知って販売力を高めていただくため、従来の座学形式に加えてEラーニングによる勉強会などにも力を入れています。

また、直接売り場をつくる直販になるので店頭で営業自らが処方の勉強会を開催したりもしています。

クラシエが漢方薬の知識向上に一番力を入れていることは、流通企業や販売員の方にもご理解いただいているのではないでしょうか。

漢方薬の良さを多くの人に知ってもらうことが、日本人のくらしをより良くしていくことは確かです。普及活動を通じてクラシエだけでなく、漢方薬のマーケットを全体的に拡大していければいいと思っています。そのためには、外部の企業とのコラボレーションなども実現できると良いと思います。

例えば、日々溜まっていくストレスへの対処方法ついては、これからますますニーズが高まっていきます。ストレス緩和するサービスを提供する企業とのコラボレーションなどが実現できると、より漢方薬の価値を伝える機会が生活者価値の視点で広がっていくのではないでしょうか。

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日々のくらしの中で起こる体調変化に、漢方薬という解決策。

私は、アラフィフを越えてから、夜中に何回かトイレに起きてしまうことが増えたので、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」を飲んでみたんです。個人差はもちろんあると思いますが、思っていたよりずっと早く効果が実感できて、その効き目に驚きました。

男性は8の倍数、女性は7の倍数の年齢で体調が変化すると言われています。男女共に50歳前後になると基礎代謝が低下したり、疲れやすくなったり、一気にパフォーマンスが落ちてしまうことがあります。

年齢はもちろん、気候や生活環境など、日々のくらしの中で起こる変化にも心身は大きく影響されるもの。

その時々に、自分に合った漢方薬を選んで取り入れることができると、より健康的にくらせるようになると思います。

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新しいウェブサービスの開発に夢中。

私が今、夢中になっているのは、新しいウェブサービスの開発プロジェクトです。わからないことも多く、生みの苦しみを味わっているところではあるのですが。

これは自分一人でできるものではなく、全員のチームワークで作り上げるもの。うまくスタートを切れるように必死になってやっているので、今一番燃えているテーマですね。スタートして仮に数年うまくいかなくても諦めずに続けて、ウェブサービスなどに興味を持つ人も育てていきたいです。

こういった新しいことに挑戦する気持ちが湧いてくるのも、漢方薬の良さを多くの人に知ってもらうことが、日本のくらしをより良くしていくことに繋がると信じることが出来るからかもしれません。

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クラシエに限らず経営資源の「ヒト・モノ・カネ」の中で一番伸びしろがあるのはやはり「ヒト」ではないかと私は思います。「ヒト」がやる気になったときに大きな変化が起こるので、次を創っていく30~40代の社員がやりたいことに挑戦できる事業にしていくことが大事なんじゃないかと改めて感じています。

<プロフィール>
クラシエ製薬株式会社 
執行役員 ヘルスケア事業部長補佐兼マーケティング部長
草柳徹哉

1989年カネボウ株式会社入社。ファッション事業本部配属となり、約9年間、百貨店・専門店の営業を担当。その後、カネボウ本体、ホールディングスの企画・コーポレートブランディング業務などを経て、2014年にクラシエ製薬株式会社へ異動。OTC部門のマーケティング全般の統括管理を行う。漢方の普及のため、漢方情報ポータルサイト「Kampoful Life」や、販売店様向けe-ラーニングサービス「漢方WEB講座」、企業の社内報向け無償コンテンツ提供サービス「オフィス漢方セラピー」などを立ち上げる。2018年から現職。


図1