1人の「くらしの夢中」を知ることで、多様な「くらしの夢中」が見えてくる
強い憧れや欲求があると、夢中が一気に加速する
新製品を作るファーストステップは、お客様の声を元にした商品のコンセプト作り。私はコンセプト作りのリーダーとして、市場調査やターゲット選定の段階から携わっています。その中で、 お客様が化粧品に求めることをより深く理解するためのヒントになるのではないか……と考え、一昨年、「くらしの夢中観測所」に応募しました。
観測員として2年目となった今期の挑戦は、さまざまな方にインタビューをして、対象者の本音(インサイト)を見つけ出すこと。今回用いた「N-1リサーチの型」は有用で、最終的には独自のインサイト発掘方法を見出すところまでいきつくことができました。 私は現在、化粧水やシートマスクの処方開発グループにおり、新制品をの開発に携わっています。
「N=1リサーチの型」は1人1人のインタビュー内容を深堀りできる効果的な メソッドです。話題の偏り過ぎを防ぎ、
まんべんなく情報を得て考察につなげるためのインタビューメモや、内容を整理するためのファクトシートは重宝しました。私の場合、勤務中の同僚にインタビューをすることが多かったため10~20分程度しか時間は取れませんでしたが、インタビューメモのポイントを押さえながら進めれば後々情報が不足して困ることはありませんでした。
インタビュー中に意識したことは「人の会話をのっとらない」ということ。相手の話を聞いているとついつい「自分は……」と話したくなってしまうのですが、それはぐっと堪える(笑)。話を中断させずに聞いていると、相手はさらに詳しい話をしてくれるのです。
インタビューを重ねるうちに、私は相手の「感情が動くポイント」に注目するようになりました。なぜなら、うれしいとか、嫌だという感情はまぎれもない“事実”で、その人の行動の本質だと思うから。私は、「感情=インサイト」という仮説を立てて、感情が動くポイントを軸に話題を広げながら、
インタビュー対象者と一緒にインサイトを探していく手法を身に付けていきました。この手法は、私にとってインサイト発掘への近道になったと思います。
「自分の当たり前は、他の人にとっての当たり前ではない」という気づき
毎月の定例会では、インタビューした内容を観測員それぞれが持ち寄り、意見を出し合ってインサイトに磨きをかけていきます。観測所のいいところは、発表内容に対して「あなたのこういう考えが面白かったです」と、その場でフィードバックをもらえるところ。客観的な意見は私の中で新しい発見ばかりでした。
質問をするばかりではなく質問される立場にもなります。定例会では毎回、発表者が「私の好きなもの」をプレゼンし、それに対して他の観測員がさまざまな質問をすることで発表者の本音に迫る「インサイト大喜利」が開催されました。深く考えすぎずに高速で仮説を考えることで、瞬発力を養います。私が発表者になった際は、みんなが私のことを一斉に考えている状況に恥ずかしさを感じましたが(笑)、自覚していなかった自分の一面を知る面白さがありました。
色々な人の考えを知ったり、自分自身のことを知ったりする中で、今さらながら感じたのは「自分が“当たり前”だと思っていたことは、他の人にとっての当たり前ではない」ということです。これは、些細なことでも相手が何を求めているかを考える必要がある、という気づきにつながり、メールの書き方、プレゼンの仕方、会議の進行方法などを見直すきっかけとなりました。これにより、新製品のコンセプト作りの際も、お客様目線の一歩踏み込んだ問題提起ができるようになってきたと感じています。
「くらしの夢中」は自分一人だけで楽しむものではない
観測員として2年目の活動が終わろうとしている今、改めて「くらしの夢中」とは何かを考えると、それは、「くらしを豊かにするもの」「多様性を楽しむもの」だと感じるようになっています。
くらしの夢中は、皆がそれぞれ何かしら持っています。あの子のくらしの夢中、この子のくらしの夢中――。自分自身がくらしの夢中を楽しむだけではなく、周りを見渡してみて「ああいう楽しみや夢中もあるんだな」と、共感したり新たな発見をしたりすることもまた、くらしの夢中の楽しみ方なのではないか……。それが私の考える「くらしの夢中」です。
観測所での活動は、私にとってチャレンジの連続でした。今期、印象的だったのは、森下合宿での「生活者まちなかンタビュー」 。道ゆく人に声をかけてインタビューせよ、というミッションとともに街に解き放たれ「もう当たって砕けろ! 数撃ちゃ当たる方式でいこう!」と、がむしゃらにインタビューしていったのが昨日のことのようです(笑)。
観測所で「くらしの夢中」を追い求めるうちに、気が付くとそこでの学びが自分自身の仕事に落とし込まれつつあります。さらに次のステップへと進んでいきたいとおもいます!
くらしの夢中観測員:安田恵美