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「インサイト深掘りフロー」でみんなの夢中を解き明かす


心の分厚い殻を破ってくれた生活者まちなかインタビュー

私の友人や家族には、 オタク気質の“夢中人”が多くいます。彼らはいつも自分の好きなことに熱中していてとても楽しそう。そして、かく言う私も夢中人。100年前の古着、恐竜、怖い人形、車……。好きになるととことん調べたくなってしまうタイプです。
 
「(私を含めた)夢中人たちは一体何を考えているのだろう?」。くらしの夢中観測所の2022年度の観測員募集を知った時、常々気になっていたことを解き明かす機会になりそうだと感じました。さらに、活動で得た学びが仕事につながったらおもしろいのではないかと考え、観測所に応募。これを機に社内の人とつながりを増やしたいという思いもありました。

8月に  東京森下の喫茶店で行われた、くらしの夢中観測所のキックオフの回、通称「合宿」の1日目は、街を歩く人に声をかけてインタビューするという「生活者まちなかインタビュー 」が実施されました。開始の1時間前に突然インタビュー企画を言い渡され大慌て(笑)。それでも何とか見つけたインタビュー相手は、子供服を専門とする古着屋の店主でした。その方の夢中を知りたくて聞いた私の質問は、「最近買って一番よかったものは何?」でした。

店主は、「ヴィンテージの家具」と答えたあと、さまざまな話をしてくれました。
 
どんな想いで子供服の古着屋を始めたのか、街の中でどんな存在でありたいのか。そしてそれらを叶えるためにどのように内装・空間を創っていくのかなど……。

まるで店主の人生観に触れさせてもらったかのような、とても貴重な時間でした。

合宿2日目は4人チームになって、インタビュー対象者の本音(インサイト)発掘を試みることに。しかし、結論にはたどり着かないまま合宿が終了。インタビューか らインサイト抽出はそう簡単にはいかないことを痛感しました……。突然の路上インタビュー 、古着屋店主の話、インサイト発掘……。2日間の目まぐるしい展開の疲労と興奮から、合宿から帰った日は眠れませんでした(笑)。でも、合宿の経験により私の心の殻は破られ、その後数々のインタビューで必要とされる柔軟性と度胸が付いたことは間違いありません。

試行錯誤を繰り返して習得したインタビュー手法と勘所

毎月開催される定例会ではテーマを決めたお題が出されるので、そのテーマに沿って家族や友人にインタビューを試みていきました。インタビューを繰り返す中で大切だと感じたのは、相手に気兼ねなく話してもらうこと。なかには、こちらの質問の意図をくみ取り、”本音”よりも”正確な回答”を返そうとしてしまう方もいます。私は、アイスブレイクを長めに取ったり、質問があくまでも私の興味の延長線上のものであるように伝えたりと試行錯誤を繰り返すうちに、思ったことを思ったように話してもらえるようになっていきました。  

さらに、インタビューを重ねていくと、絶対に逃してはならない話には“ピーン!”とアンテナが立つようになったのです。インタビュー以外のシーンでも、会話の中で「これは!」と感じたことは、すかさず深掘りできるようになりました。

「インサイト深掘りフロー」で多角的な視点を身に付ける

合宿時は4人がかりでも難しかったインサイト発掘ですが、回を追うごとに一人でも発掘までこぎつけるようになっていきました。

しかし、インサイトを発掘するなかでの悩みもありました。インタビューに時間をかけて深い話をするほどに、話には相手の心情が強く出てきます。すると、「それはもうその人の心の底なのではないか? では、インサイトって何なんだろう……」という新たな苦悩が生まれたのです。そんな時はできるだけ事実ベースで考察するようにはしていたのですが、納得のいく答えを見出すにはとても苦戦しました。
 
そんな中、不完全燃焼なインサイトをパッと垢抜けさせてくれたのが「インサイト深掘りフロー」です。これは、「それってつまりどういうこと?」と、みんなで質問や意見を自由に出し合いながらインサイトに磨きをかけていくメソッドです。各々が気軽に出した質問をディスカッション形式で詰めていくため、一人当たりの負担が少ないことが特徴です。
 
「インサイト深掘りフロー」は、一度これだと思うとなかなかそれを超える答えが出せない私の癖を改善するのにも非常に効果的でした。みんなの持つさまざまな視点を学ぶことで、物事を多角的に捉えてインサイトを抽出できるようになっていったのです。

何かに夢中になっている人に対する私のイメージは、「尖った部分を持った少し特別な人」でした。しかし、1年を通していろいろな人にインタビューしていく中でわかったのは、誰もが何かしらに夢中になっていて、それは決して特別な事ではないということ。
 
 それぞれの夢中にはその人の信念や生き方が反映されているということもわかりました。「くらしの夢中」とは何かを結論として言葉にすることは難しいですが、挑んでみると発見が多く、興味の尽きないテーマだと感じています。

くらしの夢中観測員:柴原秀哉