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“できない”が“できる”に変わる『そらぷちキッズキャンプ』・・そこには確かに夢中がある

くらしえほんがきっかけで、取材させていただくことになった『そらぷちキッズキャンプ』。
(初回記事はこちらhttps://note.kracie.co.jp/n/nbc53fd582271

今回は、①さまざまなキャンプの形と想い、②施設内部の紹介、③実際にキャンプに参加していて、いまはボランティアスタッフとしても関わって活動している小西美咲さんのお話・・と、3つのテーマで、詳しくご紹介いたします!

★『そらぷちキッズキャンプ』 
〒079-0461北海道滝川市江部乙町丸加高原4264-1
http://www.solaputi.jp/



■参加する子どもと家族への想いにあふれたさまざまなキャンプスタイル

全国の「難病などの病気とたたかう子どもと家族」を対象とし、無料でキャンプに子どもたちとその家族を招待している『そらぷちキッズキャンプ』。キャンプといっても、さまざまな形があることを伺いました。まずは4つのキャンプスタイルについてご紹介します。

1) キッズキャンプ・・子ども(小学生~高校生)だけが個人で参加
2) ファミリーキャンプ・・家族で参加
3) レスパイトキャンプ・・家族で参加、主治医同行
4) グループキャンプ・・家族会等の団体で参加

「キッズキャンプ」は、その名の通り、子どもたちだけが参加し、親元から離れ同じ病気と闘う仲間たちと集団生活を行い、“自分もできる”という自信を育んでもらうものです。

それと同時に、留守番する側の保護者は休息やリフレッシュをし、兄弟姉妹にとっては保護者との密な時間を過ごす機会にもなっているとお話を伺い、改めて、日常の生活では家族も一緒に病気と向き合っているのだと感じました。

「ファミリーキャンプ」は、家族単位で参加するもので、同じ病気の子どもを持つ家族が交流することで、“仲間がいる”と気持ちをわかちあう機会を提供しています。

闘病中は、病気の子どもだけではなく家族も孤独を感じることが多々あるそうです。そんな中、1人ではない、仲間がいると感じることの大切さを教えていただきました。

「レスパイトキャンプ」は、医療ケアの必要性が高い子どもとその家族を対象に実施しており、主治医が同行するものです。

同行する医療スタッフ含め、2家族10名程度で実施するそうです。日頃の闘病生活から離れ、非日常を感じる中で、家族が一緒に過ごす時間を提供しています。「レスパイト」とは「一時的休息」という意味です。

「グループキャンプ」は、難病の子どもの家族会や支援団体の交流を目的として実施しているものです。

これらのキャンプは、キャンプごとに同じ病種の方が集まれるように、招待し、専門の医療体制を整え、3 泊4 日の日程で行われます。滝川市立病院と連携し、緊急時に対応ができる体制も整っています。

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■車いすでも安心して過ごせるバリアフリー・ユニバーサルデザインの視点で設計・整備された『そらぷちキッズキャンプ』の施設

『そらぷちキッズキャンプ』は、敷地面積約16haの広さを誇るキャンプ施設で、その中には“どうぶつ原っぱ”、“ツリーハウス”や“うまの家”などさまざまなエリアが設けられています。バリアフリー・ユニバーサルデザインの視点で設計・整備されているので、子ども達がより活動しやすい環境になっています。

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例えば・・・
そらぷちキッズキャップでは、「森の中にあるツリーハウス」まで、車椅子のまま行くことができるのです。森の中に木のチップでならされた道を進み、ツリーハウスにかかるつり橋を渡り中へ入り、ステンドグラスなどで装飾された可愛らしいツリーハウス内部を見る。これら全てを体感することができます。木の上の景色や風を家族と一緒に見て、感じることができるのです。

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ツリーハウス

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ツリーハウスへのつり橋

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ツリーハウス内部の暖炉

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ツリーハウスのステンドグラス装飾の扉

「うまの家」では実際に乗馬もできます。直接乗れない子どものための補助器具などもあるそうです。

馬に慣れていない子どもを乗せても大丈夫なように専門の調教師ひろしさん(写真中央)が2頭の馬と待ってくれています。ひろしさんが手綱を声をかけてくれるので、キャンプに参加した皆さんも安心して乗馬を楽しむことが出来るのです。

案内をしてくださった佐々木キャンプ長が、「実際の動物とのふれあいができることの意味も大きいですが、何より“風を切って走る”という感覚をここで初めて体感する子がいるんです」とお話くださいました。普段感じている“風”や“自然”への感謝の気持ちを改めて抱く機会になりました。

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「わくわく原っぱ」では、キャンプを訪れた参加者が、スタッフが準備をしたプログラムに楽しそうに取り組んでいます。

この時は、大きなシャボン玉を作るイベントが行われていました。冬はおおきなかまくらを作ったり、ソリをしたり・・季節ごとに楽しめるさまざまなプログラムがあるようです。

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施設内には、遊んでいる途中で具合が悪くなってしまった子どもたちが休めるよう、「ほけんしつ」が併設されています。

いつもの病院にいる自分ではない状況を楽しみにしてきた子どもたちのために「病室」という雰囲気を出さないよう細部までこだわりぬかれています。まるで「図書室」のような雰囲気でした。なので、看護師さんは白衣を着ないようにしているそうです。

こういったきめ細やかな一つひとつの対応が『そらぷちキッズキャンプ』を作り上げており、『そらぷちキッズキャンプ』に参加した人々に安心できる環境で「非日常の特別な体験」の提供を可能にしているのだと感じました。

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ほけんしつ内の個室

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ほけんしつ

宿泊施設は“月のコテージ”“森のコテージ”など、子どもたちにも馴染みやすい可愛い名前がついています。中に入ると広いスペースのリビングエリア、寝室エリア、キッチン、お風呂、トイレと設備はすべてそろっていて、家族でゆったりくつろぐことができます。

トイレもバリアフリー対応がされ、車いすでも容易に使うことができます。施設内を自分で移動することができるように子どもにあわせて手すりも通常より少し低い位置に付けられていました。

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また、眺めがすばらしい大きな窓のある大浴場も備わっています。ここでは、子どもたちがみんなで、一緒にお風呂を楽しむことができます。

佐々木キャンプ長が、「『そらぷちキッズキャンプ』を訪れる子どもたちは、手術の跡が体に残り、みんなと一緒にお風呂に入れない、入りたくない・・という気持ちを持った子もいるんです。でも、同じような手術の跡が残っている子も多いので、一緒にお風呂に入ることで“自分だけじゃないんだ”“仲間がいるんだ”という気持ちも芽生えているようです。」とお話くださいました。

幼いながらもたくさんのことを感じ、考え、必死に日々を過ごす子どもたちの姿が目に浮かぶようでした。

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入浴のサポートができる椅子

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素晴らしい眺望の大浴場


■子どものころキャンプに参加していた小西美咲さん、今まではボランティアスタッフとして、そして今年5月からは正職員として活躍されます!

キャンプを見学する中で、とても素敵なことがありました。当時、ボランティアスタッフとして活躍されていた小西美咲さんとの出会いです。取材中にキャンプ場で開催されていたイベントにお母さまと一緒に参加されていました。

「もともとはキャンパー(キャンプ参加者)として『そらぷちキッズキャンプ』を訪れていました。普段暮らしていると「走ってはダメ」とか制限が多い中、ここは“どうやったら出来るか”を一緒に考えてくれるところが素晴らしいと感じました。」と語ってくれる美咲さん。

まさに、夢中に何かに取り組める環境が、ここ『そらぷちキッズキャンプ』にはあるのだなぁと思います。

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小西美咲さん

入院生活が一段落した定期通院の日、当時お世話になっていた小児外科の主治医の先生から、『そらぷちキッズキャンプ』の事を聞き、「いってみない?」という先生の言葉に「行きたい!」と即答したという美咲さん。

ただ、ご家族から離れて行く旅は初めてで、どんなところだろう、飛行機乗れるかな、友達できるかなと楽しみな半分、実は不安の方が大きかった思い出が印象的ですと話してくださいました。

実際に参加した時に、ボランティアのお兄さん・お姉さんたちの姿を見て、自分には何ができるんだろうと考えてしまったという美咲さん。その時に、そのお兄さん、お姉さんたちに「美咲だけにしかできないことがあるよ!」と背中を押してもらったことが、その後ボランティアスタッフとして参加するきっかけにもなったそう。

先生から紹介されたときに、「行きたい」と自分の思いをしっかり伝えられたことが、美咲さんにとって運命的な出会いにつながったのだなぁと感慨深い気持ちになりました。

「キャンパーとして参加していたころは、大自然の中で走りまわる、遊びきる、という経験が出来る環境と境遇を分かち合える同世代の友人に出会える楽しさを感じていました。

ボランティアとして参加するようになってからは、裏方、子どもたちの前に立って話をする役割、子どもたちと寝食を共にするお姉さんの役割など、さまざまな視点からそらぷちキッズキャンプを見ることが出来ました。

プログラムと休憩などの一日の時間配分、医療面、食事面、キャンパーやご家族との打ち合わせ等事前準備だけではなく、スタッフ間の綿密な打ち合わせもキャンプ当日の夜遅くまでされており、スタッフ間の連携がなされていることに驚きました。」と、美咲さん。

たくさんの方の協力ときめ細かな連携があってこそ、キャンプで素晴らしい時間を過ごすことができるのですよね。

『そらぷちキッズキャンプ』のスタッフみんながキャンプに参加する子どもたちとその家族のことを心から大切に想い一緒に活動していること、またそのことがしっかりと参加するみなさんにも伝わっていることがとてもよくわかりました。本当に素敵な活動です。

「だからこそ、今ここで必要なことは何か・自分に出来る事は何かを考えながら、一人ではなく周囲のスタッフさんと協力してこそ子どもたちが楽しいと思える時間を一緒に作り上げていく場所なのだという思いを大切にしています。

また、キャンパーを経験しているからこそ、より近い目線で子どもたちの心の揺れや変化に寄り添いえるような人でありたいという思いを持ちつつ、【自分の感覚や経験】と【それぞれの子どもたちが感じる気持ち、経験、辛さ、痛みなど】を同一視してしまわないように心掛けています。」と美咲さんだからこその、使命と感じているであろう強い想いと決意が伝わってきました。まさに美咲さんにしかできないことのひとつですよね。

そして「病気を抱えながら暮らしている子どもたちの周りにはいつもやさしい人はたくさんいるけれど、本当に同じ思いがわかる仲間がそう多くいるわけではありません。

友だちとの日常の会話でも、みんなにとってあたり前のことでも、その前に超えなくてはいけないことが私たちにはたくさんあるんです。」と、丁寧に話をしてくださいました。そんな貴重な仲間との出会いも『そらぷちキッズキャンプ』がくれたものだそうです。

『そらぷちキッズキャンプ』に関わることが増えるにつれて、「これがしたいな」「こんなふうにやってみたいな」と物事を意欲的に捉えたり自分で決定したり新しい挑戦に踏み出したりすることが多くなったといいます。

小さなころから今まで美咲さんをずっと見守ってきた、そして『そらぷちキッズキャンプ』に勇気をもって美咲さんを送り出したお母様にも、お話を伺うことができました。

「『そらぷちキッズキャンプ』は最初どのようなところなのか全くわかりませんでした。キャンパーとして参加し体験や出会いを経験し、ボランティアとしても参加したいという気持ちにまでなるほど『そらぷちキッズキャンプ』は今現在の娘の人生に大きく関わる存在となったのだと思います。

これまで親に任せきりだったようなことも自分でやってみようとすることも増え、心身的な親からの自立のきっかけを与えてもらったと思っています。」

改めてお子さんにとっても一番近くにいるご家族にとっても『そらぷちキッズキャンプ』の存在の大きさを感じました。

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馬に乗るお母さまを見守っています

現在の美咲さんは、臨床心理士として、小学校に入る前の子どもの発達支援やその親御さんたちのケアに携わっています。誰かの気持ちに寄り添うお仕事がしたいと、キャンプで出会った看護師さんと話す中で思ったことがきっかけだったとのことでした。そして、2021年5月より『そらぷちキッズキャンプ』の正職員として、新たなステージでご活躍されるそうです!

美咲さんだけではなく、ここを訪れたたくさんの子ども達が『そらぷちキッズキャンプ』をきっかけに、次につながる何かを得ているのだろうと思うと、やはり『そらぷちキッズキャンプ』は特別な場所だと感じます。

最後に、美咲さんからメッセージをいただきました。

「「外で遊びたい」「走ってみたい」だれでも思う当たり前のことが、当たり前にできない日々を過ごしている子どもたちがいるかもしれません。
そんな思いを真剣にサポートしてくれる場所や人がそらぷちキッズキャンプにはいます。そらぷちキッズキャンプを訪れた子どもたちが日常へ持ち帰ってくれる様々な思い出で、「また明日からちょっとだけ頑張ってみようかな」と思える気持ちを子どもたちだけではなくご家族も感じられる場所となれるよう、私も微力ながらご協力していきたいと思っています。」


『そらぷちキッズキャンプ』を訪れる子どもたちは、日常生活を送る中で、“できない”に直面する機会が少なくないと思います。

そんな中、“できる”を増やすことをサポートできる『そらぷちキッズキャンプ』は、子どもたちにとっても、ご家族にとっても、やはり唯一無二の“夢中になれる場所”なのだと美咲さんとお母さまの話を伺い、改めて思いました。

美咲さんたちとの出会いは、穏やかではありつつ、とても大きなエネルギーを感じたものでした。


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